いりたに内科クリニック

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コラム

某製薬会社様の会報誌に掲載されました

  • 2021年11月29日

「日本横断名医リレー」

Q1.先生が呼吸器内科を志したきっかけはどのようなことですか?

A.私自身が3歳から喘息患者でしたので、将来は呼吸器の医者になりたいという気持ちがありました。小学生の時が一番ひどく入退院を繰り返して、命があることが珍しいぐらいの重症喘息でした。いまから30~40年前は良い薬がある今とは違い、経口ステロイド薬などしかなく本当に薬漬けで入院しているのが殆どという状況でした。以来、喘息との付き合いは患者としての期間も含めると43年になります。
医者になる前に整体師をやっていまして、症状が良くなってから医学部に入り直しているので、ストレートな進路ではありません。学生時代は喘息で勉強など全然できず、親には、まずあなたは生きてさえいてくれればありがたいと言われて育てられてきたので、そこがスタートなんです。
今のように良い治療薬もあれば医者にはなっていなかったかもしれません。
辛い思いをたくさんしてきましたので、患者さんの気持ちが分かるという部分は自分の強みかなと思いますね。自分が重症患者だから進んだというのが私の呼吸器内科医としての始まりです。

Q2.呼吸器内科医として活躍されている人生で、最も忘れられない患者さんとのエピソードを教えてください。

A.研修医の時から在宅診療(家庭をまるごと見る)というところに興味がありました。患者さん本人が苦しいのはもちろんなのですが、それをサポートする家族のケアもしていかないといけないと思ったときに、最初から喘息だけをやるのではなく、在宅で家庭を丸ごと見ようと決めていました。
それに加えて大学病院では肺がんチームに加わっていました。呼吸器内科医として最も忘れられないエピソードというのはやっぱり肺がんの患者さんです。
色々な層の患者さんを診ていく中で、上場企業を経営されている方や、国の仕事にかかわられている方なども受け持っていました。そうした方々とお話をしていくと、失敗談は皆さん笑って話されるのに対して、やらなかったことに対してはこうしておけばよかったと後悔される方が多かったんです。例えば仕事は上手くいっていたけれど家庭は顧みていなかったことなど。そういう話を聞く中で、やれることは全部やっておいた方がいいと思うようになったことが私の最強のエピソードですね。
やらなかったことに対しては、凄く後悔するんだということが分かった時から私も少し変わって、良いことは広めないといけないと思うようになり、大学に残りながらも『病気が消える習慣』という本を出しました。
肺がんのチームに入って、色々な人とお話しする中で、後悔が無いように仕事をしていこうと思ったことが一番強烈なエピソードになります。

Q3.先生が喘息・COPDの診断・治療でどのようなことを心がけていたり、気を遣っていらっしゃいますか?

A.例えば、COPDで煙草を吸っている人は禁煙しないまま外来を受診されることはめずらしくありません。ただ、私は初対面の患者さんに、煙草をやめるようには無理には言わないようにしています。吸ってはいけないと本人が一番分かっているわけですから。いきなりガイドライン通りに煙草をやめて、吸入薬を出すというのは、オーソドックスな治療なのかもしれませんが、患者さんはそれを期待して来ているわけではなく、まずは息切れや咳の症状をとってほしいのだと思っています。
COPDで来た患者さんには、この人は何を望んで私のところに来たのかを考えるようにしています。頭ごなしに本人が分かっていることを言っても、患者さんはよくなりません。
ですからCOPDは患者さんが何を望むかを考えながら、咳や痰、息切れを少しでもとってあげることを通じて信頼関係を築き、そこからだんだん禁煙指導などをしていく方に持っていくようにしています。
喘息はいかに長くお付き合いできるかが凄く勝負だと思っています。数週間とかで症状が改善しますので、その短い時間の中でしっかり信頼関係を作っておかないと途中離脱が起こってしまいます。ですから、喘息に対しては症状をすぐに改善してあげるようにしています。そして、しっかり治してから薬を減らしていくということを長期的にしないといけないと思っています。

Q4.治療によって症状改善がみられた喘息もしくはCOPDの患者さんの声で、先生が一番記憶に残っている思い出を教えてください。

A.在宅で独居の重症COPD患者さんでなかなか厳しい状況下にあり、急性憎悪を何回も起こすことが多い人がいます。患者さんのところへ私が頻回に行けたとしても、滞在時間は20~30分ほどです。24時間の内の20~30分で、重症のCOPDの患者さんを在宅で治療していくのはなかなか難しい。
人工呼吸器も入院すれば当たり前のことですが、独居の家で入れることは大変です。家族も手伝ってくれる人もいない。24時間そばにいられるわけでもありませんしね。病院ですること以上の治療を在宅でやるということは大変なことだと思います。在宅治療は結局のところチーム連携で、人工呼吸器を入れるにしても患者さん本人だけではできませんので、看護師さんやヘルパーさんが定期的に訪問し、夜間でもサポートを行っています。
病院であれば当たり前のことも、家庭にいながら病院と同じまたはそれ以上のサポートをすることは非常に難しい。ですから在宅の方の呼吸器の診療は、医者としての深みが増すと思います。道具があっても手伝う人がいないという状況は相当に力が付く、この経験は非常に強みになると思います。

Q5.先生にとって呼吸器疾患の治療を一言で表すとどのような言葉になりますか?

A.花粉症や喘息などのアレルギー疾患は寛解はしますが、すぐに完治ということはありません。ですから、呼吸器疾患の患者さんにとって、私は生涯の主治医だと思っています。一度治っても数年後や十数年後に再燃することも珍しくないので、喘息やCOPDなどの呼吸器疾患は一度引き受けたら、自分が一生診ると覚悟をしています。今回は治まりましたが、また症状が出てきたら病院に来てくださいね、と必ずアドバイスしますね。
アレルギー疾患は風邪とは違って、個人の体質などもありますので、呼吸器疾患の治療を一言で表すなら「生涯の主治医」だと思っています。